今日は珍しく書評です。
ようやく読了しました。
世界的ベストセラー『サピエンス全史』。
2014年に海外で刊行され、2016年に翻訳本が日本で出版されているので、ちょっと古い本ですね。
だけど、そんなの関係ないくらいに面白い!
実は上下巻とも1年くらい前には手に入れていて、上巻は1年前に読み終えていました。
上巻だけでもその衝撃はすごかった。
私は人類史を7万年前から眺めた通史に初めて出会いました。
その後、なんとなく下巻を読む機会を逸し続けた結果、今日の今日まで時間がかかってしまったのですけどね。笑
稀に見る良書
さて、下巻を読み終えて改めて思うことはこれは稀に見る良書である、ということ。
極めて客観的で、それでいて抽象的に人類史を眺めているのだけど、
だからこそ著者の主観が入り込み、抽象的であることを感じさせないほど具体性に富む記述。
単なる歴史好きだけではなく、現代社会の位置や人類が到達した段階を俯瞰するにはもってこいの本です。
1年前に上巻を読んだだけでも、私自身の世の中への見方が変わりました。
というより、アップグレードしました。
とりわけ、本書に一貫して通じる視点、
「あらゆる生物の中で、人間だけがフィクション(虚構)を信じることができる」
という指摘は衝撃でした。
なるほど。
確かに、私たちはこの世のに存在しないものを信じることができます。
見たことのない神の存在を信じることができるし、
国の存在を信じて、会ったこともない人と連帯感を共有し、
人権なんていう「人が生まれながらにして持っている権利」なんてものを価値観の中核に据え、
世界中の人が貨幣を媒介として協力し合う資本主義という怪しげなシステムに平気で身を投じる。
その結果、他の動物には見られない圧倒的に強力で大規模な協働体制を手にすることができる。
下巻では、
コロンブスが新大陸を発見した頃から現代までを記述しているのですが、
科学技術とイデオロギーの関係性の指摘は興味深かったですね。
そりゃ、そうでした。
単に科学技術の発展がそのまま国の発展につながるのであれば、
紀元前には火薬を実用化しており、
鄭和がコロンブスの時代よりも先にアフリカ東海岸に到達しているのだから、
近世は中国の支配する世界でなければおかしい。
そうならなかったのは、「たまたま」中国にはその技術発展を方向付ける思想がなかっただけであり、ヨーロッパには「たまたま」それがあったということ。
貨幣経済の功罪がよくわかる話です。
そして、産業革命以降の200年間がそれまでの人類史とどのように一線を画するのか、
さらに、1945年以降現代までの70年間がいかに特異な時代であるかも指摘されています。
さらにさらに、
この本はなんと最終的に人類の幸福論に言及しています。
そんな歴史書、初めて出会いました。(°▽°)
この本の最後を締めくくっていた言葉は、印象的です。
「私たちは何になりたいのか」
「私たちは何を望みたいのか」
哲学にも似た人類が追い求めるべきテーマですね。
どんな生徒にお勧めか
この本は、正直、中学生や高校1年生には辛いでしょう。
けれど、世界史を学んだ高2・高3の生徒なら読めるはずです。
世界史を学んでないと、前提となる知識が無さすぎてちょっと辛いかもしれません。
もちろん学校で習ったとか関係なく世界史の知識や見方を培ってきた子であれば、学年問わずお勧めです。
逆に言えば、世界史を学んだ広大以上の難関大学を目指す人は、
これくらいの本は読めて当たり前であってほしいですね。
教科書で学んだ世界史を、より鮮やかに色付けしてくれるのは間違いありませんよ。
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