具体性のある指導

私の好きな本の一つに、「文章心得帖」(鶴見俊輔)があります。

 

筆者が開いた一般人向けの文章教室の講義内容を書籍の形におとしこんだものなのですが、この本の凄いところは、なんといってもその具体性にあります。

 

講義の参加者が書いた文章を筆者が講評していくのですが、その一つひとつが「これでもか!」というくらい具体的なんですね。

 

この文章のこういうところが、こういう意味でよい!

 

この文章のこういうところが、こういう意味で、このように変えるとよくなる!

 

どこまでも誠実に、明晰に、わかりやすく、具体的なアドバイスがつづられています。

学習の指導でも同じことが言えますよね。

 

たとえば、「問題文をよく読みましょう」と子どもたちに伝えたとして、「問題文をよく読む」ようになるでしょうか。

 

「よく読む」って、とても曖昧な言葉です。

 

目を高速で動かすことが「よく読む」ことなのでしょうか?

 

…目が回ります。

 

首を動かしながら文を目で追うことが「よく読む」ことなのでしょうか?

 

…首が痛くなります。

 

そういった曖昧な指示を、

 

「“男子の人数は女子の人数の3倍”の“は”がイコールを示しているので、そこを基準に式をつくろう」

 

「“経済において~とはどういうことか”というふうに、問いかけに条件つけがあればそこにマーキングをして、条件に沿った答えを考えていこう」

 

と具体化するとどうでしょうか?

 

どこから考えはじめればよいのか、まず何をすべきなのかということがはっきりしますよね。

 

アドバイスが具体的であるからこそ、子どもたちは自分で動けるようになっていきます。

 

具体的なアドバイスのもと、手を動かし、教科書や辞書をひき、さらに先生に質問する。

 

そうして自分で動き(Move)続け、知的体力を身に付けていくことこそが、意味のある指導だと考えています。