Moveの原点となった言葉

 

「あの時私の成績が上がったのは、先生たちが頑張ってくれたからだって、高校に入って気づきました」

 

この一言が、私の教育者としての人生を変えました。

 

広島の学習塾で講師をしていた10年以上前のこと。

 

当時30歳ごろだった私は、「内申点アップ」という明確な目標に向かって突き進んでいました。

 

当時の広島高校入試では内申点が命。

 

だから私は生徒たちのために、定期テスト対策の山のようなプリントを用意し、時には夜遅くまで子どもたちと向き合い続けました。

 

その甲斐あって、生徒たちの成績は右肩上がり。塾の評判も急上昇し、「成績を上げる名物講師」として親御さんからの信頼も厚くなりました。

 

「これでいいんだ」と、自分の指導に自信を持っていたんです。

 

そんなある日、第一志望高校に合格して卒塾した女子生徒が訪ねてきました。

 

中1で入塾した時はオール3だった彼女が、見事に志望校に合格した自慢の教え子。

 

「高校の成績はどう?」と何気なく聞いたその瞬間、彼女の表情が曇りました。

 

「高校に入って成績がどんどん下がって…。あの時私の成績が伸びたのは、先生たちが頑張ってくれたからだって、今になって気づきました」

 

その言葉は、私の胸に突き刺さりました。

 

子どもたちの「点数」は上げていたけれど、「自ら学ぶ力」は育てていなかったんだ。

 

テスト前の猛特訓、完璧な対策プリント、徹底した個別フォロー—これらは確かに目先の点数は上げますが、私たち大人の手を離れた時、子どもたちは自分の力で前に進めるのでしょうか?

 

同世代の保護者の方々も、きっと同じ悩みを抱えていることでしょう。

 

「子どもの成績を上げたい」と思うあまり、私たち大人が「考える機会」を奪っていないか。

 

子どもの学ぶ意欲や自走力を育てるには、もっと違うアプローチがあるのではないか。

 

あの日の後悔が、私を新しい道へと導きました。

 

「点数だけではない、真の学ぶ力を育てる塾を作りたい」—その思いが、2013年3月「進学空間Move」の誕生につながったのです。

 

今、あの女生徒の言葉を思い出すたび、私は自問します。子どもたちは「自分の力で」成長できているだろうか?点数の裏側にある、真

の学ぶ力は育っているだろうか?

 

教育者として、親として、私たちができる最高の贈り物は、「自分で考え、自分で学び続ける力」なのかもしれません。