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数学の呪文

数学の呪文

 

「数学で呪文を唱えるな」

 

ということを、よく生徒に言います。

 

 

 

例えば

 

「テイヘンカケルタカサワルニ」(三角形の面積)

 

 

「ニエーブンノマイナスビープラスマイナスルートビーノジジョウマイナスヨンエーシー」(二次方程式の解の公式)

 

が中学の範囲で出て来ますね。

 

もちろん公式を覚えているのは大切です。

 

思考をショートカットできますからね。

 

分かり切っている話を一々考えなくてすみます。

 

覚えるべき公式はきちんと覚えておくべきなのです。

 

 

 

ですが、生徒のみんなに聞いておきたい。

 

 

なぜその公式が成り立つのか、本当に理解していますか?

 

 

公式なんてただの結果であり、大事なのはその途中経過を理解していることです。

 

 それを理解していないのであれば、その公式はただの「呪文」です。

 

呪文を唱えて答えが出てくるのは、初級までです。

 

途中経過が分かっていないのに、

結果だけ高いレベルで使いこなせることはないのは自明でしょう。

 

 

 

例題を出してみましょう

 

私がこの話を中学生にする時に、本当に公式の成り立ちが分かっているかを確かめる例題がいくつかあります。

 

ここでは、その4つだけ記載します。

 

 

 

(1)台形の面積が「(上底+下底)×高さ÷2」で表されるのはなぜか?

 

(2)円周が「直径×3.14」もしくは「2πr(ニーパイアール)」で表されるのはなぜか? そもそも円周率とは何か?

 

(3)円の面積が「半径×半径×3.14」もしくは「πr^2(パイアールの2乗)」で表されるのはなぜか?

 

(4)変化の割合とは何か?

 

 

 

中3生で、この4つの質問に全部淀みなく答えられようなら心配は要りません。

 

多分、偏差値にして60くらいは余裕でクリアしているでしょう。

 

 

 

 

ちなみに

 

「円周率とは何か?」の答えは、「3.14」ではありません。

 

その「3.14」という数字は何を表す数字かを聞いています。

 

さらに、「変化の割合とは何か?」に対して「yの増加量/xの増加量」と答えてはいけません。

 

それは計算式であって、私が聞いているのはそれは何を表しているか?という定義の部分です。

 

 

答えは、・・・いずれ気が向いたら書きます。

 

 

九九の功罪

 

上の文章はどちらかというと、中学生以上の方やその親御様に向けて書いていますが、ここから先は特に小さなお子さんを持つ方に読んでいただきたいです。

 

上のような「理解していない公式をとにかく覚える悪癖」を持っている子は、実はかなり多いのです。

 

数学を勉強しているのにイマイチ伸びが悪いという子は、ほぼ全員この悪癖を持っていると言っていいです。

 

 

最近、私はその原因は「九九」にあるのではないかという気がしています。

 

 

つまり、数を体感的に理解していない状態で九九のような呪文を唱えさせられた経験が、この悪癖の最初だったのではないか、ということです。

 

 

随分昔のことですが、「幼稚園の時から九九を覚えて掛け算、割り算の練習をしてきたのに小学校に入ったらぱったり算数ができなくなった」という子をお預かりしたことがあります。

 

 

その子を指導していてすぐに気がついたのは、数というものを体感的に理解していないということです。

 

 

2で割るということがどういうことかを、量的に理解してないということです。

 

さらに、1リットルの水の量とはどれくらいで、

 

1kgの重さがどれくらいなのかピンと来ていないということです。

 

1/3時間が20分であることをアナログ時計を見ても「そりゃ、そうだ」と思えないようです。

 

 

九九が幼稚園の時にできるのは素敵なことですが、それを言えるだけならそれはただの呪文です。

 

「・・・クシチロクジュウサン、クハナナジュウニ、ククハチジュウイチ」

 

これを覚えること自体は記憶力が高い幼少時であれば、比較的たやすくできるでしょう。

 

 

しかし、問題の本質はそこにありません。

 

九九を覚える前に、数というものを生活や遊びの中で体感して、足したり引いたりでいいから自分の頭で考えて理解することこそが大事なのです。

 

どうか九九がスラスラ言えるかどうかの瑣末なことにとらわれて、本質をすっ飛ばした教育をしないようにお願いします。

 

 

学年が上がって苦しむのはその子なのですから。

 

 

 

 

この記事を書いた人

進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中でモチベーションのあり方に着目し続け、キャリア教育の重要性を認識する。2018年以降は現在のTHE DOORに繋がる講演会主催活動を主催しながら、時に自身も登壇する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。